新設される「筆界特定制度」とは?
|Ⅰ筆界紛争を解決する新制度|Ⅱ申請の手続等|Ⅲ 筆界の調査等|Ⅳ 筆界の特定|
|Ⅴ 筆界特定の結論に不服がある場合|Ⅵ 筆界特定申請の代理人について|Ⅶ 施行時期|
2月に新聞でも発表されましたので、ご存知の方もいらっしゃることと思いますが、
この度、土地の筆界が不明な場合の筆界の決め方について、新たな制度が設けられることとなりました。
今回は、この「筆界特定制度」について解説します。
Ⅰ筆界紛争を解決する新制度
これまでは、隣地との筆界が不明な場合は隣人を相手方として筆界確定の裁判をするしか方法がありませんでした。しかし、訴訟になると時間もかかる上(通常 2年程度)、裁判での資料が限られているため、裁判官が明確な判断を行うことが難しい場合もあります。また、自分の主張する筆界が正しいことを裏付けるための証拠を提出する必要もあり、双方が提出した証拠だけでは判断がつかない場合には、裁判所が第三者に鑑定をさせるための費用が必要になるなど、負担がかさむという問題がありました。このようなことから、今回、不動産登記法を改正して、筆界紛争とならないまでも筆界が不明となっている場合に、法務局における手続で、迅速に少ない費用で筆界紛争を解決するための制度を設けることになったものです。 なお、今回の制度は、あくまで不動産登記簿上で「何番地の土地」として区分されている、一筆の土地と他の隣接土地との境(筆界)を定めるのが目的です。この筆界と「所有権の範囲がどこまで及ぶのか(言い換えれば、どこまでが自分の土地であるのか)」ということとは法律上は別の問題です。後者は、一般的には「境界線」と呼ばれます。隣地との筆界が今回の手続で決まっても、実際にはその筆界を越えて長期間その越境部分を使用していたというような場合は、その部分の土地の所有権を民法上の時効により取得するというケースも考えられます。
Ⅱ申請の手続等
全国にある法務局の登記官のうち、「筆界特定登記官」と指定された登記官が、その法務局が管轄している地域の土地の筆界についての紛争を担当し、筆界の特定を行います。 具体的には、筆界について争いがあり、確定してもらいたいという人(原則として登記簿上の所有権者)は、ご自分の土地を管轄している法務局に、筆界を特定したいという申請を行います。申請に際しては、法律で定められた所定の手数料を納めなければならず、また、後記するような調査のための測量費用などについても負担しなければなりません。 法務局では筆界特定の申請があると、隣接土地所有者などの関係者に上記のような申請があったことを通知するとともに、公告します。

Ⅲ 筆界の調査等
新しい制度では、筆界特定に必要な事実調査は法務局が指定する筆界調査委員が行います。この筆界調査委員は、弁護士、土地家屋調査士などの専門家から選ばれ指定される見込みです。指定された筆界調査委員は、測量や実地調査もでき、必要があれば他人の土地にも立ち入ることもできます。 そして、正確な事実調査を行ったうえで、委員としての意見を筆界特定登記官に提出します。 また、筆界特定登記官は、申請人や関係者にも日時と場所を決めて通知した上で、意見や資料を提出する機会を与えなければならないことになっています。そして、その場では,筆界特定登記官や調査委員は、申請人や関係者に事実関係を質問することもできます。 さらに必要があるときは、法務局は関係する行政機関や地方公共団体などにも資料の提出やその他の必要な協力を求めることができます。例えば、国土交通省などでは道路行政に関連する事業を行うに際して、国の土地だけでなくこれに接する民間の土地側量等を行う場合もあります。このため、関係省庁の協力を求められるということは、土地筆界に関係する資料等を法務局に集中したうえで検討できることになり、より精度の高い調査ができることにつながります。 このような調査は、従来は原則的に当事者が立証活動として行っていたものですが、新制度では筆界問題に詳しい専門家が上記のように関係省庁の協力も得るなどして行うため、より迅速に、幅広い調査を行うことができることから、筆界特定に必要な調査期間が大幅に短縮されることが期待されています。 また、法律上も法務局は、申請から筆界特定をするまでに要すべき標準的な期間を定めて公表することとなっており,この期間については「6ヶ月」程度になる見込です。
Ⅳ 筆界の特定
筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見や登記関係書類、対象土地の状況や工作物の有無やその設置の経緯等関係するその他の事情を総合的に判断して、対象土地の筆界特定を行います。そのうえで、特定した筆界とその結論に至る理由の要旨を記載した筆界特定書を作成し、その写しを申請人に交付するなどして通知し、あわせて筆界特定をした旨の公告と関係者への通知を行うこととされています。
Ⅴ 筆界特定の結論に不服がある場合
この場合は、従前と同様に隣地の方を相手方として通常の民事裁判の手続で争うこととなります。ただ、民事裁判では、上記のような法務局での調査等の記録を見ることもできますので、これまでのように一から始めるのとは異なり、手続的な時間は相当に短縮されるものと思われます。
Ⅵ 筆界特定申請の代理人について
今回の制度新設にあたり、申請手続きの代理は弁護士だけでなく、土地家屋調査士の資格を有する人もできることとなり、また、法務省の定めた計算方法で申請者が受ける利益が140万円までの場合は司法書士も代理できることとなりました。
Ⅶ 施行時期
法務省としては,本年中には筆界特定制度の運用を始めたいということで、国会では法案の成立を推進するとのことです。
【文:鴛海量良氏/公認会計士・税理士】





