
vol.37 不動産の賃貸借期間について
佐瀬正俊氏
(弁護士)
賃貸借の期間は、「土地の賃貸借」と「家屋の賃貸借」とでは扱いが異なります。現在は、借地借家法という1つの法律ですが、平成3年までは、借地法と借家法とに分かれていました。
新しい法律が出来て既に13年経過し、最近は「新法での更新」についてのご質問をいただくことが多くなりました。アパート経営にも密接な問題でもありますので、今回はこの問題について基本的な知識を整理し、ご説明しようと思います。
初めの土地賃貸借契約の期間は30年
1 賃貸借期間は原則30年
原則として、どんな契約であろうと不動産の賃貸借の期間は、一律30年とするのが法の原則です。それまでは、木造の建物を建てようとする場合と鉄筋の建物を建てる場合とでは、土地の賃貸借期間が異なりました。一律30年としたのは、これを区別することによる混乱を防ぐ意味があります。また、木造でも耐久性は変わらないとの実質も考慮されたといえるでしょう。
2 定期借地権(例外1)
定期借地権契約をする場合は、原則の30年ではなく、期間が50年以上でなければなりません。その代わり、定期借地権の場合は、更新をしない契約が有効ですし、その効力もあります。
3 事業用借地権(例外2)
この定期借地権と同様に考えられている「事業用借地権」も同様に、原則の30年ではなく、10年以上20年以下の期間を設定することが出来ます。この場合の建物は、居住用のものを除いた「事業用の建物」で、例としては、コンビニ、郊外型レストラン等が考えられます。
4 一時使用契約(例外3)
建物の所有を目的とする土地の賃貸借でも、その目的または当事者の合意内容から一時的なものであるといえる場合があります。例えば、土木工事や建物工事用の現場事務所を建てるために土地を借りる場合があります。この様な場合は、その工事期間中だけ契約が出来ればよいわけですから、法律上の原則と異なったとしてもそれを認めることが経済原則にも叶うと考えられ、認められているものです。
土地賃貸借の更新期間
1 はじめの更新は20年
定期借地権以外の通常の土地賃貸借については、新法では、初めの更新の場合は、原則として更新の日から20年となります。この期間については、それ以下にはできないとの趣旨であり、20年以上の期間とすることは出来ます。
2 2回目以降の更新は10年
2回目以降の更新については、更新期間は原則として10年となります。
これらの新法の考え方は、旧借地法では、地主に不利でありすぎて、経済的合理性に合致せず、経済的な発展を阻害するとの実質論があると考えて良いでしょう。
3 新法と旧法との関係
原則としては、新法施行後の賃貸借契約は新法で、旧法時の賃貸借契約は旧法が適用される、こととなります。
しかし当事者が、旧法ではなく、新法での適用のある賃貸借契約として契約をし直し、更新することを合意するのであれば、それは有効となります。例えば、旧法では、堅固の建物では30年、その他の建物では20年の更新期間でなければならないことが規定されています。従って、今後30年、20年の更新料となり、金額としても多額なものとなりますし、裁判所の判例上の金額としても安くはありません。借地人としても、一度に多額の更新料を支払うよりは、10年に一度でも安い更新料の方が支払いやすい、という場合が考えられます。この様な場合は、新法、旧法と厳格に考えるのではなく、柔軟に地主と借地人との双方の意図に合致する方法を考えていくのも1つの方法といえるでしょう。
4 建物賃貸借については、原則1年以上
(1) 原則1年以上
借家契約は、期間が1年未満の場合は、期間については無効とされ、期間の定めのない契約と見なされます。ほとんどの契約がこの通常の賃貸借であり、この原則の適用があるものと思います。
(2) 一時使用賃貸借(例外1)
一時使用のために契約がなされた場合は、例えば、家を建てる期間だけアパートを借りるという借りる側の要請による場合と、10ヶ月後に家を建て替えるがそれまでは、人に貸してもいいといいう貸主側の事情による場合とが考えられます。この場合の契約期間は、1年未満の期間でも有効です。これは、一時使用契約に該当し、この様な契約形態も認めていかないと社会的財産である建物を合理的に利用出来なくなってしまうからです。
(3) 事業用建物賃貸借(例外2)
専ら居住以外の事業用の建物を建てるための借地契約の場合は、その借地契約により建設した建物を賃貸する場合に、借地権が期限が来た場合には、建物賃貸借も期限となり、建物を明け渡さなければなりません。つまり、更新はありません。郊外型レストランで、そのレストラン経営のために建物を貸している場合などが考えられます。
(4) 確定期限付借家契約(例外3)
生活の本拠となる建物をある一定の期間だけ賃貸する場合の特例です。例えば、自宅を転勤のためにその転勤期間のみ賃貸とする場合もその様な契約書を作成すれば、法による期限とは関係なく確定期限としての賃貸借契約が結べます。
5 建物賃貸借の更新期間
(1) 更新契約も期間は1年以上
更新契約の場合も、通常の賃貸と変わらずに、1年以上の更新期間でなければなりません。
(2) 更新契約をしない場合
更新契約をしなかった場合は、法定更新が認められることはありますが、その場合の更新期間は、定められていません。従って、契約としては、期限の定めのない賃貸借契約となります。
期限があるということは、その期限までは契約があることとなり、居住に関しても安心ですが、期限のない場合は、いつでも正当理由さえあれば明渡しを請求されても仕方がないという状況になります。この場合には、その明け渡しが正当であるかどうかが問題となり、裁判でもその点が争われることになるでしょう。

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