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アパートと日照権問題

Ⅰ日照権とはⅡ受忍限度という考え方Ⅲ請求できる人Ⅳ 家主さんとしてできること

隣地に建物が建築されることによりアパートの日当りが妨げられ、いわゆる日照問題に発展することがあります。今回は、アパート経営にまつわる日照権問題について要点をお話します。

Ⅰ 日照権とは

日照を受ける権利ともいえる「日照権」そのものについては、これを直接定めた法令はありません。日照に関する法律としては、建築基準法56条に「北側斜線制限」と呼ばれる、建物の高さを規制する(北側から一定の角度で引いた線より高くできない)ことで北側隣地の日照を確保しようとするものがありましたが、日照権は、昭和47年に最高裁の判決により明確に法的保護の対象となるとされて認められたものです。  そして、この日照権を侵害した場合には、侵害された側は損害賠償請求ができるとされており、その侵害が著しいような場合は、建築工事を中止させることもできると定められています。

Ⅱ受忍限度という考え方

日照権を侵害するものであればすべて法的責任は生じる、ということになると、ほとんど都心では家が建てられなくなります。その責任を負うものであるのか否かを判断する基準としては、「受忍限度(社会生活上一般に受忍すべき限度)」という考え方があり、これを超えるか否かということにより責任の有無が判断されます。とくに建築工事の中止を認めるかどうかは、受忍限度を著しく超えているような場合で違法性が強いような場合に限られます。  このような受忍限度を超えるか否かについては、概ね次のような点について検討した上で、総合的に判断することになります。

(1) 日照被害の程度  午後8時から午後4時までの従前の日照の状況と、新たに日照が妨げられる時間を比較し、日照被害の程度が判断されます。これを図面にして解り易くしたものが「日影図」と呼ばれるものです。また、通常は、日影がもっとも大きくなりやすい「冬至の時期での被害状況」を検討します。もちろん、他の時期での日影による被害、あるいは逆にどれだけ日照を確保できるのかも参考にされます。  なお、地面から1.5m(おおよそ1階の窓の高さ)、4m(2階の窓の高さ付近)または6m(おおよそ3階の窓の高さ)のいずれかの高さでの日影を問題とするのですが、地域の用途に関する法的な規制(都市計画法での「用途地域」、例えば「商業地域」とか「第一種低層住居専用地域」など)により、どの程度の高さ、あるいは境界線からどれだけ離れた距離の地点で測るかが決められています。

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(2) 地域性  アパートがある地域が、2階建て建物等が建ち並んでいるような地域なのか、それとも高いビルも建ち並ぶ高層化が進んでいるような地域なのかによっても受忍限度は影響が出ます。これは、現実にどのようになっているかということだけでなく、上気した用途地域も参考にされます。 (3) 関係法規の適合性  加害建物が、建築基準法その他、建物を建てるための条件を定めている法令に違反していないかどうかを検討します。 (4) 加害建物の状況  建物の用途・目的、建物の規模、構造、建物の配置などについて、周辺地域のものと比較して問題がないか、あるいは周りへの日照被害について軽減させるためにどのような配慮をしているのか、といったことなどを検討します。 (5) 被害建物の状況  加害建物と同様に建物の用途・目的、建物の規模、構造、建物の配置などをみて、被害建物自体が、日照を受けるためにどのような犠牲や努力が払われているのかという問題です。  なお、被害建物に居住する人が、病弱等の特殊な事情により、一般人より多くの日照を必要としたり、1階部分における日照を必要とする場合があります。このような場合であっても「日影に対する受忍限度のいかんは、基本的には、それぞれの土地でその占有権原に基づいて生活を営む者同士の間で、社会生活上どの程度の不利益を甘受すべきかの問題であり、当事者の一方について存する個別的な特殊事情は、権利濫用、信義則違反等の法理が問題になる場合でない限り、原則として考慮すべきでない。」(東京高裁昭和60.3.26判決)と考えられています。つまり、隣人がどのような生活を送っているかは千差万別であり、そのような事情により隣地使用が制限されたりするのは、著しい私権の制限をもたらしかねないということです。

Ⅲ請求できる人

日照権侵害について、加害建物を建てる人に対し損害賠償請求や建築工事中止を求めることができるのは、「被害建物に居住し現に日照を享受している人」とされています。これは、日照権が人間の存在にとって不可欠な快適な生活(居住空間)を保護するための権利であることからくるものです。このため、建築工事の中止を求める請求については、被害建物に居住していない者(例えば、更地の所有者、被害者建物においてガレージ業を営む者、被害建物の賃貸人)からの講求は、裁判所では認められていません。  また、日影ができることによる土地や建物の価値が下がるということでの損害賠償請求についても、裁判所では認めていません。これは、経済的な利益を守ることが日照権の目的ではないからです。

Ⅳ 家主さんとしてできること

上記してきたように、家主さん自身が被害建物に居住していない限り日照権を理由に何らかの行動をとることは難しいということになります。しかし、入居者の方たちは、上記のとおり日照権による保護を受けられるのであり、この入居者の方たちにその権利を行使していただくことにより、間接的に被害を少なくすることが可能です。

【文:鴛海量良氏/公認会計士・税理士】

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