
vol.32 家屋の固定資産税評価額とは?
鴛海量良氏
(公認会計士・税理士)
家屋の固定資産税評価額がわかりにくいという声をよく耳にします。アパートオーナーの皆さんからの質問も多くいただきます。そこで今回は、「家屋の固定資産税評価額」について解説します。一般に“固定資産税評価額”とよくいわれますが、地方税法では「価格」と規定しています。しかし、ここでは一般に親しまれた呼び方、つまり、「評価額」と呼ぶことにします。
税法で「固定資産税評価額」が時価もしくは評価額として使われるのは、(1)相続税・贈与税(家屋については固定資産税評価額が適用されるが、土地については路線価方式と倍率方式があり、後者の場合に固定資産税評価額が適用される)(2)不動産取得税 (3)固定資産税 (4)都市計画税 (5)登録免許税の5種類です。
土地の固定資産税評価額(価格)については、平成6年度において土地基本法第16条が改正され評価の一元化が規定されてから、それまで地価公示価格の5~20%程度であったものが、70%をメドに大幅に引き上げられました。したがって、土地については路線価(地価公示価格の80%)と固定資産税評価額の差が大幅に縮小されました。
家屋(建物)については、一般的に上記5種類の税金に共通して固定資産税評価額、つまり、「評価の一元化」が採用されており、従来から特に混乱はありませんでした。
ところが、家屋については、この「固定資産税評価額」が分りにくい、ということを良く耳にします。なぜ分かりにくいのでしょうか。新築の場合でも、家屋の固定資産税評価額は建築費の半分くらいであるものの、新築時に一旦、固定資産税評価額が決まると、毎年減価しているはずなのにその評価額がなかなか下がらない…。そこに分りにくい原因があると思うのです。
そこで、今回は家屋の評価の仕方、つまり、その分かりにくさを説明したいと思います。ただし、家屋の固定資産税評価額の計算の仕方は非常に複雑であり、限られたスペースでどこまで分かりやすく説明できるか、心配な面もあるのですが…。
家屋の評価の仕方
家屋の評価は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて算出します。また、この評価基準では、再建築費(価格)を基準として評価する方法(再建築価格方式といいます)により家屋の評価額を求めることとしています。
再建築価格とは、評価の対象になった家屋とまったく同一のものを評価の時点において、その場所に新築した場合に必要とされる建築費をいいます。
具体的には、評価しようとする家屋について、次の算式で求めます。
家屋の評価額(価格)
=単位当り再建築費評点×経年(損耗)減点補正率×床面積×評点一点当りの価額
注1. 「再建築費評点」は、木造・非木造別に評点基準表が定められており、屋根、基礎、外壁、柱・璧体など家屋の表面に現れた部分から、家屋の隠れた内部に至るまで、その家屋の部分別の再建築費評点を求め、それを合計して積算する方法を採用している。
注2. 「経年(損耗)減点補正率」は、家屋を通常の維持管理を行うものとした場合に、その年数に応じて通常生ずる減価を基礎として定められているもの。木造家屋の場合の経年減点補正率は、初年度0.90、3年度目0.75、6年度目0.65、9年度目0.58、12年度目0.51、15年度目0.44、18年度目0.37、21年度目0.30、24年度目以降0.20、となっている。この減点補正率をみると、残価率を0.20とし、6年度目以降、残価率に至るまでの間は経過年数に応じ、定額法を用いて算定されている(3年ごとに0.70ずつ減価)。紙数がないので省略するが、定額法の計算方法、残存価額割合などが通常の減価償却方法と比べ特殊である。
注3. 「評点一点当りの価額」は、以下の算式により得た額を基礎として定めることとしている。
評点一点当りの価額=1円×物価水準による補正率(*1)×設計管理等による補正率(*2)
*1. この補正率は、家屋の資材費、労務費等の工事原価の地域的格差などを考慮して決められている。直近の評価替年度である平成15年度に適用される固定資産評価基準においては、2年前の平成13年1月現在の工事原価に相当する費用の東京都(23区)における卸売物価水準に対する市町村における卸売物価水準の割合をいう。
*2. この補正率は、家屋の工事原価に含まれていない設計管理費、一般管理費等負担額の費用を基礎として定められたもので、木造家屋は1点当り1.050円、非木造家屋は同じく1.10円とされている。このような方法で算定された固定資産税評価額は、通常の建築費に比較しておよそ二分の一の水準です。例えば、現金4000万円を持っている場合に、その4000万円を投じて家屋に転化すれば2000万円として評価されますので、2000万円の評価減が実現します。その差に着目して、例えば40000万円のローンでアパートなどを作るような相続対策がなされる訳です。
家屋が古くなったのに評価額が下がらないのはなぜか。
この質問は東京都のホームページに掲載されているもので、私もよく受ける質問の一つですが、上述の再建築価格方式がカギとなります。
会計上の減価償却は、当初の取得費をもとに、定率法であれ定額法であれ使用期間が経過するにしたがい未償却残高は逓減し、残存価額が5%になるまで償却が可能です。
これに対し、固定資産税評価額は3年ごとにその家屋を、多分上昇しているであろう再建築価格方式で評価替えをする、いわば評価額のプラスにつながることを行い、一方で経年減点補正率を適用し評価額がマイナスになることを行って求めた評価額と、従前の評価額といずれか低い額を、その年度の評価額として採用するわけです。
したがって、再建築価格の上昇割合が、年数の経過によって生ずる減価の割合を上回る場合は、家屋が古くなっても必ずしも評価額は下がりません。
かといって一般的に家屋は減価して行きますので、前年度の評価額を上回ることは好ましくないので、その場合は固定資産評価基準に定められている経過措置により、前年度の評価額を据え置くこととされています。
固定資産税評価額の据置制度と評価替え
固定資産税は毎年評価して課税することが本来妥当であると考えられるところですが、課税事務の簡素化を図るうえでは、むしろ課税標準となる価格(評価額)は一定期間据え置くことが適切であると考えられます。その見地から、土地及び家屋については、その評価額を原則として3年間据え置くこととされています。
つまり、土地及び家屋に対して課する課税標準は、基準年度の評価額をもとに課税し、第2年度第3年度は新たな評価は行わず、基準年度の評価額を据え置くこととしています。
したがって、固定資産税における「評価替え」とは、基準年度における土地及び家屋の評価額を求めることであるとも言えます。この場合の基準年度とは、昭和31年度並びに昭和33年度から起算して3年度または3の倍数の年度を経過したごとの年度をいうものとされています。
そういう意味で平成15年度は評価替えの年に当たります。なお、据置期間を3年間としているのは、物価の変動、資産の状況の変化等の事情を考慮に入れたものです。
このように家屋の固定資産税評価額の算定は分りにくい内容ですが、新築家屋の場合の評価額はおおむね建築費の半分、と覚えておけば良いでしょう。

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