アパート経営ゼミナール vol.31 貸室が犯罪に使われたらどう対処すればよいか?

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vol.31 貸室が犯罪に使われたらどう対処すればよいか?

 このところ悪質な犯罪が多発しています。こうした物騒な世情は、アパート経営には無関係とはいえません。もし、大麻の栽培や覚せい剤の保管場所など、貸室が犯罪のために使用されたり、また、貸室が傷害事件などの犯罪の現場になるなどのトラブルが起きたとき、大家さんとしてどのように対処したらよいのでしょうか?今回は、このような不測の事態の対処方法についてお話します。

貸借人本人に対する対処方法

1.賃貸借契約の解除
 貸借人が旅行中に第三者に犯罪に使用されるなど、本人がまったく知らなかったような場合は別ですが、そうでない限り、まず、貸借人本人に対しては、債務不履行を理由として契約を解除することができます。
 解除の理由としては、用法違反(使用目的違反)、善管注意義務違反(民法400条)があげられ、大家さんと賃借人との信頼関係が破壊されたとの主張ができるでしょう。なぜなら、借りている部屋を犯罪の場所として使用することは通常の用法ではありませんし、大家さんがあらかじめ承認しているとはいえないからです。
2.損害賠償請求
 契約解除とは別に、被った損害への補償も問題となります。例えば傷害事件などにより貸室が汚損されたり、貸室の修繕が必要になり、貸室の使用が一定期間不能となることもありえます。その場合には、賃借人、あるいは他の当事者に対して修繕費や、一定期間貸すことができないことによる得られたはずの利益につき「損害賠償請求」をすることができます。
 通常、賃貸借契約書には、「貸借人が建物を破損又は滅失したときは、その損害を賠償すること」等の条項があるはずですし、そのような条項がなくとも賃借人の原状回復義務(民法598条、616条)がその根拠となるでしょう。
 また、契約関係のない他の当事者に対しては「不法行為による損害賠償請求」ということになります。

新たな貸借人募集の際、注意したいこと

 明渡しを受けた後は、当該貸室の貸借人を改めて募集することとなります。
 その際に、大家さんは、新たに賃借人になる人に対して、“当該居室で犯罪等のトラブルがあったこと”を告知する義務はあるのでしょうか?
 それを判断する基準としては、通常の感覚を持つ人からみて、その部屋に居住するにあたり心理的に嫌悪すべき事由(これを「心理的瑕疵〈かし〉」といいます。)に該当するかどうか、もしあらかじめ事件のことを聞かされていたら入居しなったかどうか、ということになります。
 たとえば、以前の賃借人が1)「居室内で違法な薬物や拳銃を隠していたという場合」と、2)「居室内で自殺してしまった場合」とを比べてみましょう。
 1)の場合は、以前の賃借人がそのようなことをしていたとしても、後から住む人とっては、仮に聞かされても入居しないということにまではならず、それほど問題がないと思われます。
 これに対し、2)の場合は、居住するにあたり心理的に気持ち悪いと考えて、そのような部屋は借りたくないと考えるのが普通だと思われます。
 2)のような場合には、事実を隠して賃貸しようとすれば、一旦は通常の賃料額で貸すことができるかもしれませんが、後に事実が判明した場合、入居者からは「詐欺」であると訴えられたり、損害賠償の請求をされる場合が考えられます。したがって、あらかじめ告知する必要があると考えられます。
 それでは、大家さんは、新たな借り手になろうとする人に対し、どれくらいに期間、貸室にトラブルがあったことを告げなければならないのでしょうか?
 たとえトラブルがあったとしても、汚損した部分をきちんと修繕するなどして物理的に問題がなく、ただ、心理的に気持ち悪いと感じられるのみであるような場合、このような心理的瑕疵は、通常は年月の経過とともに段々と薄らいでいき、ついには、心理的瑕疵があるとはいえなくなります。そうなれば、大家さんにおいても、新しい入居者に賃貸するにあたって、その貸室に事件があったことを告げる必要もなくなるのです。
 では、心理的暇疵がないとみなされるまでには、どのくらいの期間が必要なのでしょうか。
 トラブルの性質にもよりますが、仙台のワンルームマンションの一室で自殺者が出たというケースにおいては、「二年程度」の期間が経過すれば心理的瑕疵とはいえなくなると判断され、人に貸せないその期間の賃料相当分を損害とみて連帯保証人に対する請求を認めた、東京地方裁判所の裁判例があります。ただし、この2年というのは、あくまで“そのくらいの期間がたてば気にする人がいなくなるだろうというとみるのが相当だ”という裁判所の判断でしかなく、具体的な基準や何らかの法的な計算根拠等があるわけではありません。また、都会のように人が多く様々な出来事が日常生じている地域の場合と、そうでないところとでは、「自殺があった」という事実がその地域で気にされなくなるまでの時間にも、多少の差があるのでのではと思われます。
 いずれにしても、上記の期間については、本来の賃料よりも低額の家賃でしか借り手がいないとか、最悪の場合には全く借り手が現れないことも考えられ、その期間の損害は、既に述べたとおり、貸借人および連帯保証人に対し損害賠償請求をすることになります。


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