アパート経営ゼミナール vol.30 特定の事業用資産の買換え特例

アパート経営ゼミナール

vol.30 特定の事業用資産の買換え特例

 今回は、特定事業用資産の買換え特例について解説します。個人が1)平成18年12月31日までの間(一定の買換えについては平成15年12月31日までの間)に、2)その個人が事業(※1)の用に供している“特定”の地域内にある、3)“特定”の資産を譲渡し、4)譲渡したあと一定期間内に、5)“特定”地域内にある、6)“特定”の資産を取得し、7)その取得の日から1年以内に買換資産を事業(※1)の用に供したときに適用可能な制度で、8)譲渡資産の譲渡価額と買換資産の取得価額のうち、いずれか低い方の金額の80%(※2)(一定の買換えについては90%)に相当する部分について、課税の繰延べが認められる、というものです。
 
※1 事業用資産には、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で、相当の対価を得て継続的に行うものも含まれます、この場合の「相当の対価」については、貸付資産の減価償却費や固定資産税その他の必要経費を回収したあとにおいて、なお“相当の利益が生ずるような対価”を得ているかどうかにより判断されます。
 したがって、「相当の対価」を得ているアパートや土地の貸付けも事業の範囲に含まれることになりますが、一方、他の要件を満たしているアパート経営であっても赤字であればこの特例を受けることは出来ません。
※2 この規定による課税繰延べ割合は、80%又は90%です。課税繰延割合とは、譲渡収入金額のうち譲渡がなかったとされる割合(課税されない割合)を言います。ただし、買換資産の取得価額が譲渡収入金額を下回る場合には当該取得価額の80%または90%となります。
 なお、「中高層耐火建築物の買換えの特例」(租税特別措置法第37条の5)は課税繰延割合が100%となっていますが、この特例は買換資産が中高層の耐火建築物に限定されていることなど適用範囲が狭いので本稿での解説は省きます。
 
 この制度は、譲渡資産と買換資産の組み合わせが“特定”され、かつ、その内容も“特定”されていることから、「特定の事業用資産の買換えの特例」と呼ばれ、租税特別措置法第37条に規定されています。
 19ある組み合わせのパターンのうち、特にアパート経営に多く適用される特例は次の二つです。

税繰延割合80%――その1

既成市街地等“内”から既成市街地等“外”への買換え(租税特別措置法第37条第1項第1号)は課税繰延割合80%となります。
 
1.譲渡資産
 既成市街地等(※3)内にある事務所もしくは事業所として使用されている建物またはその敷地の用に供されている土地等(借地権を含みます、以下同じ)で、譲渡日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるもの(※4)。適用期限は平成18年12月31日までの譲渡です。
 
※3 既成市街地等とは首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地で、具体的には次のとおりです。
 東京都の特別区及び武蔵野市の全域、並びに三鷹市、横浜市、川崎市、川口市の一部。
※4 例えば、譲渡日の属するその年1月1日において土地の所有期間が10年超、建物が10年未満のときは、譲渡対価のうち土地の対価に相当する部分のみこの特例の適用を受けることができます。

2.買換資産
既成市街地等“外”にある次の資産。
1) 土地等
2) 建物、構築物または機械装置
買換資産がアパートとその敷地であれば課税繰延割合80%の特例が受けられます。

課税繰延割合80%――その2

長期保有の土地建物等から特定の資産への買換え(同法第37条第1項第21号)は、課税繰延割合80%となります。
 
1.譲渡資産
 国内にある土地等、建物または構築物で、譲渡日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるもの。ただし、適用期限が平成15年12月31日までの譲渡に限られますので、この適用を受けたい方は年内に譲渡契約をする必要があります。
 この特例は、国内にある事業用の資産であれば適用されますので、表面〔1〕の特例よりも適用範囲がはるかに大きい、つまり、たいへん使い勝手の良い特例と言えます。
 ただし、適用期限が今年末までとなっており、平成16年度税制改正において適用期限の延長が望まれるところです。
2.買換資産
 国内にある土地等、建物、構築物または機械装置。

本制度に関する留意事項

1) “譲渡”には、収用交換による譲渡、贈与、交換、出資及び代物弁済による譲渡を含みません。つまり、これらを原因とする譲渡の場合は、この特例の適用はありません。
2) 譲渡資産も買換資産も、いずれも事業の用であることが必要です。
3) 買換えた土地の面積は、譲渡した土地の面積の5倍以内までしか適用されません。つまり5倍を超える部分の面積は買換資産にはなりません。借地権の場合も同じです。
4) 買換資産は原則として、譲渡資産を譲渡した年中、前年中、翌年中に取得し、取得した日から1年以内に事業の用に供しなければなりません。また、取得してから1年以内に事業の用に供したとしても、取得してから1年以内に事業の用に供さないこととなったとき(例えば、取得して1年を経過しないうちに居住用に変えた場合)は、当然ながらこの特例の適用はありません。
5) 買換資産の税務上の取得価額は、実際の取得価額とは異なります。譲渡資産の取得価額を一部引き継ぐような「付け替え価額」によりますが、この計算は複雑です。
 したがって、買換資産を事業の用に供したときの減価償却計算や将来譲渡したときの取得価額は、この「付け替え価額」に基づいて計算されますので、必要経費が少額→所得金額増大→税金増加となって跳ね返ってきます。
 つまり、譲渡したときに税金を減額する代わりに将来いただこう…という趣旨と考えることもでき「課税繰延べ」と呼ばれる所以です。
6) 上記5)のように買換資産の取得費は譲渡資産の取得価額を80%または90%引き継ぎますが、通常の買換えや交換と違って取得日は引継ぎません。したがって所有期間の計算の始期は買換資産の実際の取得日によります。将来、買換資産を譲渡するときは注意しましよう。

課税繰延べの仕組み

別図に、譲渡代金=買換資産の取得費、の場合、つまり、譲渡代金を全部買換資産の取得に使い切る場合を示しておきますが、この計算は非常に複雑ですので省略します。具体的には税務署または会計事務所にお尋ねください。

別図
譲渡代金=買換資産の取得価額(使い切り)の場合
〈前提〉
1 譲渡資産の譲渡収入 200,000千円
2 必要経費=譲渡資産の取得費10,000千円+譲渡費用10,000千円=20,000千円
3 買換資産の実際取得費 200,000千円
1) 売切りの場合の譲渡所得=譲渡収入200,000-必要経費20,000千円=180,000千円
2) 買換特例の適用を受けたときの譲渡所得(課税繰延割合80%)=(譲渡収入200,000千円×0.2)-(必要経費20,000千円×0.2)=36,000千円
3) 買換資産の税務上の取得価額=(必要経費20,000千円×0.8)+(譲渡収入200,000千円×0.2)=56,000千円


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