8.未分割のアパートから生ずる不動産所得の申告
Vol.14において、「相続人間の遺産分割協議でアパートを取得した場合は、相続人の死亡日に遡って効力を生ずる」、と説明しました。しかし、遺産分割の協議が遅れ、被相協議がまとまらないうちに所得税の確定申告を迎えることも往々にしてあります。言いかえれば、アパートが未分割の状態の場合は、所得税の確定申告を誰が行うのか、つまり不動産所得が誰に帰属するかという問題が生じます。
相続財産が未分割の場合の相続財産(この場合はアパート)は、各相続人の共有に属するものとされていますので、その相続財産から生ずる所得は、分割が行われるまではその相続分に応じて帰属することになります。
その場合の共有割合は
(1)遺言により相続分が指定されている場合
→ 指定相続分
(2)そうでない場合
→ 法定相続文になります。
したがって、相続人のうちの特定の誰かがアパートを管理しているからといって、その相続人の所得として申告することは出来ません。
後日、協議がととのってそのアパートの分割が行われたときは、その分割後にアパートから生じた不動産所得は、実際に相続した人の相続分に応じて確定申告をします。
9.事業用の買換資産を借入金で取得した場合の借入利息の経費性
租税特別処置法第37条は、個人が特定の事業用資産を譲渡し、一定の要件を満たす事業用資産を買換えて事業の用に供したときは、「買換えに充てた金額のうち80%は譲渡がなかったものとする」規定になっています。
この規定、譲渡代金でもって買換資産を購入しなければならないように考えられがちですが、そうではありません。
事業用資産の買換え特例を受けても、借入金で買換資産取得していること、その買換資産を不動産所得の基因となる貸付けの用に供したことが明らかであれば、その借入利息は、不動産所得の計算上、必要経費に計上することができます。
たとえば、2億円の譲渡収入があっても、実際の購入に伴う資金を借入金で充当した場合の、その2億円の借入利息は全額、「必要経費」に算入できるわけです。
10.耐用年数の全部を経過した場合の「償却可能限度額」
減価償却資産の残存価額と償却可能限度額の関係は、次のとおりです。
残存価額 償却可能限度額
(1) 有形固定資産 10% 95%
(2) 無形固定資産 0% 0%
つまり、アパートなどの有形固定資産は、定率法・定額法のいずれを採用するかを問わず、償却率は耐用年数が到来したときに残存価額が10%になるように定められていますが、未償却残額が5%になるまでは、耐用年数を超えて償却を行っても認めることとされています。このことを「償却可能限度額」といいます。
一方、水道施設利用権のような無形固定資産は、抽象的な権利であって、残存価額というのはありえず、したがって償却可能限度額という考え方もありえません。
11.非業務用資産を業務用に供した場合の償却計算
従来、居住していた自宅を貸付けた場合は、減価償却計算は次のように行います。
減償却方法として定額法を採用する場合は未償却残額が問題になることはありませんが、定率法を採用する場合には、居住期間(非事業用期間)の減価償却費を算出し、その額を控除したものを未償却残額として計算します。
居住期間中の償却計算に適用する償却率は、法定耐用年数を1.5倍した耐用年数に応じた償却率を用いて計算します。
注)この場合、1.5を乗じて計算した年数の1年未満の端数は切捨てます。また、経過年数6カ月以上の端数は1年として、6カ月未満の端数は切捨てます。
<計算例>
1.前提条件
取得年月 平成10年1月
取得金額 2100万円
2.法定耐用年数 27年
償却率 定額法 0.037
定率法 0.082
3.貸家に供した年月 平成14年11月
4.経過年数 (非事業用期間の年数)
平成10年1月~平成14年10月→4年10月→5年
5.未償却残額の計算
27年×1.5=40.5 → 40年
耐用年数年の定額法償却率
21,000,000×(1-0.1)×0.025×5年
=2,362,500円(5年間の償却費相当額)
21,000,00-2,362,500=18,637,500円
(未償却残額)
注)上記計算式中、括弧内の0.1は、法定耐用年数が到来したときの残存価額相当分の意味。定率法の償却率も、これを考慮して定められています。
6.平成14年分の減価償却費の計算
→ 貸家の用に供した月数2カ月
(1) 定額法の場合
21,000,000×(1-0.1)×0.037×2/12=116,550円
(2) 定率法の場合
18,637,500×0.082×2/12=254,713円
なお、平成10年4月以後に取得した建物は、取得原因のいかんを問わず「定額法」しか採用することはできません。






