アパート経営ゼミナール vol.18 主に初期費用と臨時支出について

アパート経営ゼミナール

vol.18 主に初期費用と臨時支出について

臨時支出
  5.立退料
  6.立退かせるために要した訴訟費用
  7.借地にアパートを建てた場合の地代
写真:鴛海量良氏(公認会計士・税理士)

鴛海量良氏
(公認会計士・税理士)


今回は、Vol.14の続編として、「アパート経営に伴う臨時支出」について、引き続き解説します。前回は、「Ⅱ.臨時支出」の4項目めまで掲載しましたので、5項目めとなります。

臨時支出(前々号からの続き)

5.立退料
 長期におよぶアパート経営では、家賃を長期に滞納する、近隣にどうしようもない迷惑をかける、建物に損害を及ぼすような行為を行う、アパートの用法を変更する(例えば、居住用を事務所へ)、あるいは危険な行為をする、といった入居者が時々見られます。このような場合、家主は、自ら立退き交渉を行うこともありますが、一方で、管理を委託している不動産業者に交渉を依頼することもあります。このような場合、家賃を何ヶ月分か免除したり、その上に立退料を支払って退去してもらうこともあります。
 その立退料にも、建替えに伴い発生する立退料、アパートを譲渡するために支払う立退料、さらには入居している入居者に支払う立退料といった種類があります。
 以下、それぞれのケースに分けて解説します。
(1)家賃免除の場合
   立退料を支払う代わりに、家賃の何ヶ月分かを免除することがあります。この場合は、家賃収入と立退料の関係は、家賃をいったんもらって、同時に立退料を同額支払う、いわゆる"行って来い"という言い方になるのでしょうか。かといって同額だから家賃収入を計上する必要がないのではないか、との疑問も生じますが、やはり、不動産所得を生ずる基因となっている建物の入居者を立ち退かす以上、"家賃収入を不動産所得の収入に計上する一方で、同額の立退料を必要経費として計上する"必要があります。さらに立退料はアパート経営が事業的規模かどうかを問わず全額を必要経費に算入出来ます。この点については以下同じです。
  (2)家賃免除+立退料を支払う場合
   当然のことながら、この場合の家賃免除分は収入に計上する一方、必要経費には家賃免除に立退料をプラスした額を立退料(支払額が確定した年の必要経費)として計上することになります。立退料が多額なためにその年分の不動産所得が赤字になったときは他の所有と損益通算が出来、税金が安くなります。
それでもなお損益通算ができず、その年の所得が赤字となったときは、青色申告の場合に限り、その赤字(税法上は損失と呼ばれます)は3年間に渡って繰越控除が可能です。
  (3)建替えに伴う立退料
   アパート建替えに伴う立退料は、建て替えた後もアパート経営は継続しますので、その立退料は必要経費に算入されます。しかも、Vol.12の3項目めで述べたようなアパートの取壊し費用や資産損失が事業的規模の場合と非事業的規模の場合とで必要経費に算入できる金額が異なります(前者は全額が必要経費に算入出来るのに対し、後者はこれらの損失を控除する前の所得を限度として経費算入が認められる)が、上記(1)で述べたように立退料は全額が経費になります。
 
  (4)アパートの譲渡に伴う立退料
   この場合の立退料は譲渡所得の譲渡費用、すなわち、必要経費になります。その3で述べた取り壊し費用や資産損失と同じ考え方です。
  (5)アパート取得に伴う立退料
   この場合には、取得したアパートと土地の取得費に含めます。取得したアパートを取り壊さずに引き続きアパート経営を行う場合は、立退料を建物であるアパートとその敷地である土地に時価で按分しなければなりません。建物に按分された立退料は、建物の取得費に含められ、減価償却を通じて使用期間(耐用年数)内に費用化されることになりますが、土地に接分された立退料は土地の取得費に含められることになります。
 一方、取得したアパートを賃貸せず、おおむね1年以内に取り壊したときは、全体が土地の取得費と見なされて、立退料も全額、土地の取得費に算入されることになります。
6.立退かせるために要した訴訟費用
 上記の立退きに当たって、弁護士に交渉や訴訟を依頼することもあります。この場合の訴訟費用等は、アパートが業務の用に供されている以上、当然ながら必要経費となります。
 一方、その訴訟費用等がアパート(敷地を含む)の譲渡のために発生するときは譲渡所得の必要経費(譲渡費用)となりますが、取得するために発生するときはアパートと土地の取得費に含めます。
  この点は上記、立退料と同じようにお考えください。
7.借地にアパートを建てた場合の地代
 一般に"借地"といっても、地代を支払っている場合の土地の「賃貸借」と、親族から借りて地代が支払われない土地の「使用貸借」の二つが考えられます。
 法律上の"借地権"は建物の所有を目的とした土地の地上権または賃借権を言います(借地借家法第9条第1号)。詳細な説明は省きますが、世間一般では、圧倒的に賃借権が多く、物権的性格の強い地上権は土地の所有権に近く、その設定はむしろまれな存在だと言って良いでしょう。
  以下、場合を分けて説明します。
 
(1)借地上にアパートを建設する場合の地代
 例えば、自宅をアパートや自宅併用アパートに建替えたり、あるいは庭先に別棟のアパートを建替えたりする場合の地代の扱いは、次のようになります。
 
 
イ. 借地上の自宅をアパートに建替えた場合
 自宅を取壊してアパートを建替えた場合は、アパートの建築工事着工時点から完成までの期間に発生した地代は、税務上は"繰延資産"、すなわち、"開業費"とされ5年間で償却、つまり必要経費に算入されます。
 ただし、完成後にアパートを事業の用に供するときに、その金額をその年分の必要経費に算入する旨を確定申告書に記載した場合には、全額をその年分の必要経費とすることが出来ます。したがって、事実上、建設期間中に発生した地代は、必要経費に算入出来ることになります。
 開業費が問題になるのはアパートの建築工事が年をまたがって行われる場合です。その場合は前年から完成までに発生した開業費を集計しておいて、アパートが事業の用に供された年に開業費全額を必要経費に計上することになります。
(注)開業費とは、その支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶ次のような費用を言います。すなわち、事業を開始するまでの間に特別に支出する広告宣伝費、旅費、調査費、土地の賃借料(上に述べた地代のことです)などです。
 
ロ. 借地上の自宅をアパート併用住宅に建替えた場合
 建設期間中に発生した地代の扱い方は、基本的には上記イと同じです。
ただ、借地を自宅とアパートの両方で利用していますので、建物の延床面積を基準にして両者に配分し、アパート部分に見合う地代相当額を開業費に含めます。
 
ハ. 借地の庭先にアパートを別棟で建てた場合
 これも基本的には上記イ及びロと全く同じです。借地のうち、自宅とアパートそれぞれが利用している借地面積を区分し、アパートの敷地部分に見合う地代を開業費とします。区分しにくい場合は、それぞれの建築面積(床面積ではありません)で按分するのも一つの方法です。
 
ニ. 借地上のアパートを建替えた場合
 この場合は、従来からあるアパートを取壊してまたアパートを建てますので、"開業"という言葉になじみません。したがって、取壊費用と資産損失(この点は14年4月号Vol.189をご参照ください)以外は、その年分の必要経費に計上されます。
 
 
(2)使用貸借で借りている土地にアパートを建替えた場合
 "使用貸借"を法律用語で説明をすれば、使用貸借とは当事者の一方(借主)が、ある物(この稿の場合はもちろん土地のことです)を無償で使用収益したのち、その物の返還を約する合意と、相手方(貸主)から、その物の引き渡しを受けることによって成立する契約のことをいう、とされています。
 つまり土地を"無償"で貸借しますので、地代が発生する余地がありません。したがって、借地借家法の保護がないことになります。ただし、借主がその土地の維持費用である固定資産税を、その土地の所有者に支払う場合であっても、それは土地の使用の対価(つまり地代)とみなされず、公租公課の支払と引き替えに土地を貸し付けることを契約内容とする"負担付使用貸借"であるとされています。
 なお、この場合の固定資産税は、建設期間中の固定資産税は"開業費"として、完成後(事業の用に供した後)のそれはその年分の必要経費として扱われることになります。
 


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