
vol.17 アパートの鍵に対する責任
佐瀬正俊氏
(弁護士)
最近はピッキング等の被害が多くなり、このような被害について、家主や管理会社の責任が問題となるケースも現実に出てきています。そこで、今回は、このような防犯や安全管理の問題に関する家主の責任は、法律的にはどう判断すべきなのかについてお話します。
家主の鍵に関する義務の内容
アパートの賃貸借契約上は、入居者が家賃や共益費を支払う義務、あるいは利用の規約を守る義務があるのに対して、家主は入居者に住居として使用できる貸室を引き渡す義務とそれを維持する義務とがあると考えられます。 そこで、引渡後も住居としての機能を損なうようなことが起これば、その原因や責任が入居者側になければ、家主が補修等をする責任があることが原則とされています。例えば、台風などのために雨漏りするようになった場合は、雨漏りしないよう家主が補修しなければならないことは理解できるでしょう。鍵の問題もこれと同じです。住居には、鍵がついていることが常識であると考えられ、鍵が老朽化などの理由によって壊れてしまえば、家主としては新しい鍵を取りつけなければなりません。
家主が提供すべき住居とは、一般常識に従った鍵のある住居だと言えるからです。この意味で家主に鍵のある提供する義務があるということができます。
鍵の程度はどうあるべきか
では、家主が提供する鍵とは、どの程度の鍵である必要があるのでしょうか。家主には、ピッキングの被害にも遭わないような解鍵困難な高価な鍵をつけたり、二重の鍵をつけるなどする義務まであるのか、ということです。
鍵の種類は、電子ロックから公団等で見られるような一般的タイプのものまで多くの種類があり、機能が高いものほど価格も高くなっています。この中でどの程度の鍵を付けるべきかは、一般常識に従った家主の判断に任されているといってよいでしょう。従って、家主としては、一般的だと考えられる鍵を付けておけば十分鍵を付ける義務を果たしている言えます。
この場合、現実には、公団等と同等の鍵を基準とするのが妥当と考えられます。
ピッキングの被害と家主の責任
現実に鍵が破られ被害が出た場合に、ピッキング対策用の鍵ではなかったことを理由に家主に損害賠償ができるか、という問題も考えられます。 全ての義務というのは、あくまでも一般的な常識に従った義務ですから、ピッキング対策用の鍵ではなかったことを理由に家主が損害賠償責任を負うことはないと思われます。 鍵を付ける義務は、付けた鍵の種類等が同程度の貸室一般に使用されているものであれば、家主さんとしての義務を果たしていることになるからです。ただし、例外としては、ピッキング対策用の鍵が付けてあることを募集の際の宣伝文句にしている場合は、その様な鍵ではなかった場合には、家主の責任問題が生じることになります。
入居者が変わるたびに、鍵を取り替える義務が家主にあるか
通常は、入居者が部屋を出る際には、鍵を回収しているでしょうから、「鍵を回収しても他に合い鍵を作っている可能性もあると考えて、鍵自体を取り替えなければならないか」は、常識として判断しなければなりません。出て行く人に"貴方は合い鍵を作って返さないのでは"ともでは言えないでしょう。入居者が変わる度に新しい鍵を付け替える義務まではありません。また、賃貸借契約の際には、合い鍵の作成禁止や仮に作成してしまったようなときは、それも含めて家主に鍵を引き渡す義務を入居者に課しておくことや、退去時に他に合い鍵を作成していないことの確認書をとるなど、即応の注意は払って、鍵に関する危険性をなくすよう努力する必要はあるでしょう。
現実にピッキングの被害が生じた場合に、家主さんとしては、他の部屋にピッキング被害がないように信頼性に高い鍵に付け替える責任があるか
これは、入居者から要望として出される場合もあるでしょう。この様なときに、家主としてはどうすべきなのでしょうか。法的には、その鍵自体が正常なものである限り、上記のような要望に応じる義務まではありません。これは、家主として通常の機能を有する鍵を付けている以上、通常以上のものにする義務まではないからです。このことは結局、犯罪に対する防衛を、どの程度家主が行い、どの程度入居者が行うのかということです。
入居者が、頑丈な鍵に付け替えるのを許可して欲しいと言ってきた場合はどうすべきか
これは、退去時に現状回復して貰うことを前提にした一般的な造作の問題と同様、付け方、付ける場所などの問題から建物に被害が及ばない限り許可をしても良いでしょう。
以上のことは、法律的には一般的な問題として考えるために、出ている結論ですが、もちろん家主として自発的により安全性の高いタイプの鍵に取り替えること自体は、今後のアパート経営の募集活動の一環として、宣伝として入居率を高めるためにも必要な検討事項であることはいうまでもありません。反対に、鍵は入居者が自由に好きなものを付けてよい制度にするのも、今後のアパートの安全管理方法としてはあり得ることなのかも知れません。

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