アパート経営ゼミナール vol.14 主に初期費用と臨時支出について

アパート経営ゼミナール

vol.14 主に初期費用と臨時支出について

臨時支出
  4.相続により取得したアパートの税金
写真:鴛海量良氏(公認会計士・税理士)

鴛海量良氏
(公認会計士・税理士)


前々号のアパート経営ゼミナールvol.12において解説した「アパート経営に伴う臨時支出」について、引き続き解説します。今回は、アパートを相続した場合の税金について、要点を取り上げました。

臨時支出(前々号からの続き)

4.相続により取得したアパートの税金
  (1)相続税
   民法の規定にしたがって遺産(財産)を取得したとき、相続税法の規定にしたがって課せられる税金です。この相続税は、所得を得るための税金ではないので必要経費となりません。単なる家事費用にすぎません。
  (2)不動産取得税
   相続によりアパートやその敷地を"取得"しますが、地方税法の規定により相続を原因とする不動産の取得は非課税とされています。
  (3)登録免許税
   相続を原因とする所有権移転登記に係る登録免許税や司法書士に対する報酬は、家事費用です。所得を得るために必要な経費とみなされません。これも単なる家事費用にすぎません。
  (4)固定資産税
   固定資産税や不動産取得のように賦課課税方式(国や地方など課税する側が税額を決定する方式)を採用している税金は、納期の開始の日または実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入されます。
 ただし、固定資産税(もちろん、これにあわせて納付する都市計画税も同じですが)のように納期が分割されている場合は、各納期の税額をそれぞれ納期の開始日、または実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することが出来ます。
 納税者が死亡したときは、その死亡したときまでに納税額が確定したものが必要経費に算入されます。
 これを要約すると次のようになります。
  固定資産税の通知の時期が
(1)相続開始前の場合→次のいずれかを選択適用して、被相続人の準備確定申告を行う。
 イ.全額 ロ.納期到来分 ハ.納付済み額
(2)相続開始後の場合→次のいずれかを選択適用して相続人が確定申告を行う。
 イ.全額 ロ.納期到来分 ハ.納付済み額
もちろん、同一年度の固定資産税を被相続人と相続人の両者の必要経費として重複して算入できないことはいうまでありません。
 
  <納税者が死亡した場合の所得税の確定申告>
   次の場合は、相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)から4ヶ月以内に、被相続人の所得税の確定申告を(準確定申告と言います)をしなければなりません。
  イ. 所得税の確定申告をしなければならない人が、その年の1月1日から3月15日までに確定申告書を提出しないで死亡した場合
例えば平成14年2月28日に平成13年分の所得税の確定申告をしないで死亡した場合は、4ヶ月後の平成14年2月28日までに準確定申告書を提出しなければなりません。
ロ. 年の中途で死亡した人が、その死亡した年分の所得税について確定申告をしなければならない人に該当する場合
上記の例では、平成14年1月1日から2月28日までの所得(平成14年分)について、6月28日までに準確定申告書の提出をしなければなりません。つまり、この例では平成14年分のほかに、上記イの平成13年分の両方を6月28日までに提出することになります。
 一方、例えば平成14年5月20日に死亡した場合は、平成13年分の所得税の確定申告書は生前すでに提出されていますので、平成14年分のみを9月20日までに提出することになります。
 なお、被相続人の準確定申告書は、同人の住所地を管轄する税務署に相続人全員の連名により提出します。

 
  (5)青色申告の承認申告
   被相続人が青色申告をしていたからと言って、アパートの相続人が自動的に青色申告制度の適用を受けられる訳ではありません。相続人が改めて青色申告の承認申請をしなければ、その制度の適用はないので注意してください。もっとも、相続人がすでに青色申告制度の承認を得ている場合は、その限りではありません。
  <相続によりアパートを取得したときの青色申告承認申請>
  1. その年の1月1日から1月15日までに相続によりアパートを取得した場合→
その年の3月15日までに承認申請をすれば、その年の分から青色申告制度を適用できる。
例えば、平成14年1月10日に相続によりアパートを取得した場合に3月15日までに承認申請をすれば、平成14年分から青色申告の適用がある。
2. その年の1月16日以後、12月31日までにアパートを相続により取得した場合→
相続の開始日(アパートを取得した日)から2ヶ月以内に承認申請をすれば、その年分から青色申告制度を適用できる。例えば、平成14年10月15日に相続によりアパートを取得した場合は、同年12月15日までに承認申請をすれば、平成14年分から青色申告の適用がある。
 ここで注意しなければならないのは、"相続により取得・・・"の意味です。一般に、相続財産は、遺言があるときは、遺言の指示にしたがって遺産を分配し、そうでないときは相続人間の協議により遺産を分割します。
 民法では遺産分割の期限を定めていないので通常は遺産分割に数ヶ月から1年、あるいはそれ以上の時間を要することもあります。しかし一方で、相続税法では申告期限を相続開始日(一般的には死亡日)から10ヶ月以内(延納や物納を申請するときも同じく10ヶ月以内)とされています。
 その多くの場合は申告期限に間に合うように遺産分割の協議が整いますが、遺産分割の効力は、相続開始日に遡及する。と民法は規定しています。
したがって、アパートを"相続により取得してから2ヶ月以内"に青色申告の承認申請は事実上不可能であることがほとんどです。相続によりアパートを取得したときの青色申告制度の承認申請は、タイムラグを生ずるということを念頭において下さい。
 
 
  (6)原価償却方法の選択の届け出
   税法では、原価償却資産の区分に応じて、2つの償却方法を定めています。一つは、届け出により選定できる償却の方法、もう一つは届け出による選定をしなかった場合に適用される償却の方法です。
 相続によりアパートを取得し、初めてアパート経営を行う方も、この扱いが適用されます。その概要は次のとおりです。(以下、「届出償却方法」は、届け出によって選定できる償却方法、「法定償却方法」は、届け出をしなかった場合に適用される償却方法のことをいいます)
(1)平成10年3月31日以前に取得した建物
イ.届出償却方法 定率法または定額法
ロ.法定償却方法 定額法
(2)平成10年4月1日以後に取得した建物
イ届出償却方法 届け出不要
ロ法定償却方法 定額法
 ここで重要なことは、被相続人が所有していたアパートが(1)に該当し、定率法を採用していた場合であっても、相続(または贈与)により取得した時(相続開始日=死亡日)が平成10年4月1日以後である場合は(2)の建物に該当し、したがって定額法しか採用できない、ということです。
(3)建物附属設備、構築物、工具器具備品など建物以外の減価償却資産
イ届出償却方法 定率法または定額法
ロ法定償却方法 定額法
つまり、上記(1)と同じです。
 
 
  (7)相続により承継した借入金とアパート
 被相続人が借入金でアパートを取得したときは、相続人がどのようにアパートを相続し、借入金を承継するかによって、借入利子の必要経費算入の扱いが異なります。
 例えば、相続人が甲、乙、丙の3人で、アパートの相続税務評価額1000万円、借入金3000万円のとき
 
(1)甲がアパートと借入金全部を相続した場合→
借入利子のすべてを甲の不動産所得の必要経費に算入できます。
(2)アパートは乙丙が共同相続し、甲は借入金を承継した場合→
甲が負担する借入利子は乙丙の不動産所得の必要経費に算入できません。
(3)アパートは甲乙丙3人で共同相続、借入金は甲が承継した場合→
甲が負担する借入利子の3分の1のみを甲の不動産所得の必要経費に算入することができます。


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