アパート経営ゼミナール vol.12 主に初期費用と臨時支出について

アパート経営ゼミナール

vol.12 主に初期費用と臨時支出について

写真:鴛海量良氏(公認会計士・税理士)

鴛海量良氏
(公認会計士・税理士)


前々号のアパート経営ゼミナールVol.8でアパート経営の初期費用についてその内容を解説して参りましたが、今回より臨時支出について解説します。

臨時支出(前々号からの続き)

1.建て替えに当って支出する取壊し費用と資産損失
   取壊し費用は文字通り旧建物の解体及び取壊しに要する費用です。一方、資産損失とは、取壊し時点における旧建物の未償却残高(つまり帳簿価額、略して単に帳価とも言います)のことをいい、具体的には次のように計算されます。
  資産損失=旧建物の取得費+設備費・改良費-減価償却累計額
   また、取壊し費用と資産損失を必要経費に算入する場合は、アパート経営が事業的非事業的規模かにより、扱いが異なります。この違いは、これまでも折りにふれてvol.11で解説して来ましたが、非常に重要な事柄ですので、もう一度整理しておきましょう
 アパートなど不動産貸付業が"事業的規模"かどうかは、いわゆる5棟10室基準を満たすどうかで判定されます。具体的には次の通りです。
  a.アパートなど共同住宅の場合
   国内外で経営しているアパートが、10世帯以上であれば事業的規模とみなされます。マンションも同様です。なお、10世帯以上という要件は1棟である必要はなく、2棟以上のアパートを合計して10世帯あれば良いのです。
  b.独立家屋の場合
   1戸建てのような独立家屋の貸付は5棟以上であれば事業的規模とみなされます。
  c.貸地の場合
   貸付件数が50件以上であれば事業的規模とみなされます。この場合の5件は、アパート1世帯に相当します。
  d.駐車場の場合
   いわゆる青空駐車場は、保管台数が50台以上であれば事業的規模とされます。パーキングタワーや時間貸しの駐車場で、管理人を置いているような駐車場は、事業所得または雑所得とされますので、この扱いから除外されます。
この場合の5台はアパート1世帯に相当します。
上記a、bについては「5棟10室基準」とよばれるもので従来どおりですが二つ以上の形態、例えばアパート8世帯と貸地10件、あるいはアパート6世帯と貸地10件と駐車場10台のような場合は、貸地5件または駐車場5台をアパート1世帯とみなす扱いですので、それぞれ10世帯と同様の取扱いとなります。
  このようにアパートが事業的規模かどうかで経費の扱いが異なるのは、後述の貸倒損失のほかに青色申告特別、青色専従者給与、事業専従者控除(白色の場合)です。
以下、場合を分けて解説します。
  (1)自宅を取壊してアパートを建てかえる場合
   取壊し費用も自宅の資産損失いずれも家事費用ですので、経費にもアパートの取得費に算入されません。
  (2)旧アパートを取壊して新たにアパートを新築する場合
  イ.事業的規模の場合
 取壊し費用、資産損失いずれも経費に算入できます。その結果、不動産所得が赤字となった場合は、その他の黒字の所得と損益通算できます。
ロ.非事業的規模の場合
 取壊し費用は資産損失に含まれませんので経費に算入できますが資産損失は、それを控除する前の不動産取得を限度に控除できます。例えば、取壊し費用と資産損失を差し引く前の不動産所得(総収入-必要経費)が150万円、取壊し費用が200万円、資産損失が450万円のときは、取壊し費を差し引くと不動産所得は50万円の赤字となり、その場合はその他の所得と損益通産できますが、資産損失は控除しようがありませんので、それで打ちきりです。
しかし、取壊し費用が100万円のときは不動産所得が50万円となりますので、資産損失400万円のうち50万円のみ控除でき、残りの350万円はそれで打切りとなります。

  (3)アパートを建てるために建物付き土地を購入したとき
  イ.その取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手するなど、その取得が土地を利用する目的であることが明らかなとき
 その建物の取得価額と取壊し費用はすべて土地の取得費に算入します。
ロ.建物を利用した場合、取壊しに着手したとき
 自宅として利用した場合は上記に、賃貸で利用した場合はに、空き家のまま1年を過ぎてから取壊した場合は、上記に準じて判定します。
(注)仮にこの建物が1戸建てであっても、ほかに8世帯のアパートを経営していれば事業的規模判定されます(前記1を参照)。
 
  (4)アパートとその敷地を譲渡するために取壊したとき
   この場合の取壊し費用は、上と所得の必要経費(譲渡費用)には含まれます。つまり、アパートの必要経費になりません。
  (注)なお、取壊し費用を必要経費に算入する年分はその資産(アパート)が取壊しにより、アパートの機能を果たし得ないことが客観的に認識できる状態のときです。具体的には解体・取壊し工事に着手したとき、となります。したがって、取壊し工事が翌年にまたがる場合であっても、取壊しという損失ははその年に発生していますので、その年の末までに費用全額を支払っていない場合でも未払経常として経費に上げることができます。
 
2.災害による減失
  火災などを原因としてアパートが減失したときの資産損失は、保険金等で補填される部分の金額を除き、次のように扱われます。なお、以下は特に断りがない限り、建物すべてが減失したものとして解説します。
  (1)事業的規模の場合
  全額経費に算入されます。ただし、確定申告書を提出するまでに保険金等の金額が確定していないときは、その見積り額に基づいて経費に算入すべき金額を計算しますが、後日その見積り額と異なることが明らかになったときは、遡及して不動産所得を訂正することとされています。ただ、速やかに、としか言いようがありません。
なお、簿価を超える保険金等の収入があるときは、等価相当額は経費に算入されませんし、また、その上回った保険金等の収入も資産の損害を原因として支払われるものですから非課税所得となります。
問題は保険金等の収入(例えば3000万円)が簿価(例えば500万円)を超えるが、時価(アパートの再築価額、例えば3500万円)を下回る場合です。この場合の500万円は被災事業用資産の損失と呼ばれ、3年間の損失繰越控除が認められます。
  (2)非事業的規模の場合
  非事業的規模のアパートが災害等により減失した場合の扱いは、事業的規模の場合よりも複雑ですので、現実に直面したときに税務署や会計事務所に問い合せのうえ、処理してください。
 
3.貸倒損失
  不動産所得を計算する場合の総収入(家賃など)は、現実に現金で回収された日ではなく、原則として、契約で定められている支払日に計上しなければなりませんが、いったん収入金額に計上して確定申告したものが、支払が滞って後日回収不能におちいることがあります。
 この場合の貸倒損失は次のように扱われます。
  (1)事業的規模の場合
  回収不能が生じた年分の必要経費に算入されます。
  (2)非事業的規模の場合
  その回収不能額は、その収入の生じた年分に遡って収入金額がなかったものとして、その収入金額に計上した年分の所得の再計算をします。この場合は、税金の納め過ぎということになりますので、それを税務署から返してもらう手続として「更正の請求」をします。
この請求期限は、回収不能となった翌日から2ヶ月以内とされています。たったの2ヶ月ですから、忘れないようにしてください。
 
参考文献:田中信昭
「改訂新版所得税 必要経費の税務」大蔵財務協会


ページの先頭へ

>> アパート経営ゼミナール 一覧ページへ