アパート経営ゼミナール vol.10 知っておきたい司法改革の内容

アパート経営ゼミナール

vol.10 知っておきたい司法改革の内容

平成13年6月に、政府の司法制度改革議会が今後の日本の司法制度をどの様に改革すべきかの意見を提出しました。現在、この意見に従い、おおよそ平成16年までには新しい法律が作られることになっており、現在その作業中です。司法改革は、国民生活に大きな変化をもたらすものです。 そこで、アパート経営ゼミナールvol.10では、その主な内容を説明したいと思います。もちろん直接アパート経営に関係するものではありませんが、国民として知っておくべきだと思われる重要な内容を、紙面の許す範囲で上げてみましょう。

行政に対するチェック機能の強化

 最近新聞でにぎわしているように、公務員の判断による行政行為が国民の不満を呼び、その問題が裁判でも解消されていないとのことから、裁判による行政に対するチェック機能を強化することにしています。

刑事裁判へ国民が参加

アメリカ映画に出てくるように国民が裁判官と同じような役割を果たす、「裁判員」という制度が提案されています。これは、陪審員とは違いますが、一般の国民が裁判で証人尋問を聞いたり、証拠を見たりして有罪か無罪かを判断することになります。民間での社会経験のない裁判官の判断だけで、国民が納得できない判決を出してしまうことを防止するための制度です。 裁判員の選任方法など細かい点は決まっていませんが、裁判員に選任されれば、裁判官と同様に判断をしていかなければなりません。 日本の裁判は、書類ばかりで裁判を傍聴していても何をしているのかが分かりにくかったのですが、これからは弁護士も検察官も裁判員に対して理解できるような説得をすることになるでしょう。

逮捕された人に対する弁護士の保証

日本の刑事裁判では、死刑判決を受けた人が後で無実だと分かった例が何件かあります。 その多くが、逮捕されたときに警察官、検察官に自白を強要されたことが原因と指摘されています。先進国では、逮捕されただけでも弁護士を付けることが保証されていますが、日本ではまだその様な制度はありません。逮捕された人は、留置場から早く出たくて嘘であっても迎合的な証言をしてしまうことが多いことが経験的に知られていますが、その様なことがないように、逮捕された人に弁護士を付けることを保証することが盛り込まれています。先進国の人権尊重の思想を取り入れようとする制度ですが、このような制度がないことが、沖縄で逮捕された米軍軍人の取調べを日本の制度で行うことをアメリカが認めない理由ともなっています。

裁判の充実と迅速化

裁判の迅速化が図られることになりました。日本の裁判が世界の水準と比べて遅いわけではありませんが、事件によっては世界的にもまれなくらいに長期にわたる事件があります。いまの制度では、長期になっても仕方がないと思われるのですが、それを少しでも短くしようとするものです。しかし、裁判が早くなっても当事者の言い分を十分聞いてくれないのであれば、何のための裁判かも分かりません。そのバランスが難しいことになります。

民事裁判の費用の低減

現在は、民事裁判では請求額が大きければ大きいほど、裁判を提訴するときに裁判所に支払う印紙代が高くなるよう決められています。そのために、例えば、お金はないが評価の高い土地を持っている人が、その土地に関して裁判を起こそうとしても印紙代が高いために裁判ができないケースがあります。このような制度は、国民から裁判をする権利を奪うものだという観点から、その印紙代を安くしていこうとしています。

弁護士費用の敗訴者負担

裁判でかかった弁護士費用は、全部ではなくとも裁判に負けたものが相手方の弁護士費用も負担する制度にしようとするものです。これは、裁判で勝ったにもかかわらず、自分の弁護士の費用を支払うということは、その弁護士費用だけは、本来支払わなくても良いものを支払っているので損害となり、その損害は負けた人が負担すべきと言う考え方です。裁判を起こすこと自体が不当だと思われる場合は、異論がないのですが、この制度を原則とすることは、国民の裁判を受ける権利の行使を妨げるものとして弁護士会は反対しています。例えば、高利貸しが裁判を求める例は多いのですが、高利貸しは一般に領収書をだしていません。従って、裁判を起こされた人は、実際は支払をしていてもその証拠がないために負けてしまうこともあり得ます。このように証拠がないために負けてしまう人に対しても相手方の弁護士費用まで負担せよというのは、妥当な制度とは言えないという理由です。これは、多くの人に影響を及ぼす制度です。つまり、裁判に負けてしまえば、自分の弁護士の費用と、相手方の弁護士の費用の両方を支払わなければならなくなり、その負担だけでも大変なことになるからです。

司法試験の合格者の増員

司法試験合格者は、1年でおよそ500人、750人、1000人と推移してきましたが、この人数を3000人までにしようという構想です。そして、裁判官、検察官、弁護士の数を増やそうとするものです。 これは、現在の人数では、国民の法律的な需要に応えきれるだけの人数がいないという考えからです。そのために、司法試験そのものを易しくしようとしています。易しくすることにより、裁判官、検察官、弁護士としてふさわしくない人がなることを防ぐために、原則として法科大学院を卒業しなければ、司法試験を受験できないようにしようと考えています。つまり、試験だけで良き法曹人を判断するのではなく、法曹人となるための特別な教育を受けた人が実務家になることとし、質が低下することを防止しようとしているのです。


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