
vol.4 平成13年度税制改正のポイント
鴛海量良氏
(公認会計士・税理士)
平成13年度は、法人、個人の土地譲渡に係わる課税については、平成10年、11年と続いた緩和処置を引き続き延長する形で税制改正が行われました。近年の土地をめぐる状況に大きな変化が見られず、また今後の土地をめぐる状況を慎重に見極める必要があるとの判断からです。
今回は、個人が土地や建物(以下、単に土地等と言います)を譲渡したときに係る税制改正について解説します。
適用期限が延長された特例
1.長期譲渡所得の、税率の特例の適用期限延長
譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地等を譲渡したときに係わる税金は、所得税20%、住民税6%の税率ですが適用期限が3年間延長され、平成15年12月31日までの譲渡について引き続き適用されることになりました。
2.優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡したときの長期譲渡所得の税率の特例適用期限延長
所有期間が5年を超える土地等を国や地方公共団体、または、一団の宅地造成を行なう業者に譲渡したときは、
(1)所得金額が4000万円以下の部分は
所得税 15% 住民税 5%
(2)所得金額が4000万円超の部分は
所得税 20% 住民税 6%
の軽減処置が適用されますが、この特例の適用期限が3年延長され、平成15年12月31日までの譲渡について引き続き適用されることになりました。
3.特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除の特例適用期限延長
所有期間が5年を超える一定の居住用財産を譲渡して買換えたときの譲渡損失は、3年間の繰越控除が認められています。
この制度は、バブル時に高値で居住用財産を購入した人が、住宅の買換えがしやすいように譲渡損失の繰越控除とともに、いわゆる住宅ローン控除との併用をも認めようとするものです。
この制度の適用期限は3年間延長され、平成15年12月31日まで譲渡について引き続き適用されることになりました.
なお、この制度の仕組みは非常に複雑ですので詳しくは税務署または会計事務所にお尋ねください。
4.特定の居住用財産の買い換え特例における買換え住宅の用件緩和と適用期限延長
所有期間が10年を超え、かつ、居住期間が10年以上である住宅を譲渡し、一定の住宅を取得した場合には、買換えに充てた部分は譲渡がなかったものとされて譲渡所得を軽減する措置があります。今回、この適用期限が3年延長され、平成15年12月31日まで引き続き適用されることになりました。
また、買換え住宅の要件が次のように緩和されました。
特定の事業用資産の買換え特例
一定の事業用資産を譲渡して、一定の資産を買換えて事業の用に供したときは、買換えに充てた金額のうち原則として80%の部分は譲渡がなかったとされます。
この特例は、譲渡資産と買換資産の組合わせが"特定"されていることに特徴があります。
この特例は23種のパターンがありますが、このうちアパート経営者が利用しやすい主なものを2パターンだけ(いずれも課税繰延割合80%)について説明しましょう。
1.既成市街地等"内"から"外"への買換え
(1) 譲渡資産
既成市街地等"内"にある事務所または事業所用建物(福利厚生施設を除きます)またはその敷地(借地権を含みます)。
この譲渡資産は平成3年3月31日以前に取得されたものとされていましたが、今年度の改正で、譲渡した年の1月1日において10年を超えるもの、に改められました。ただし、この改正は平成14年1月1日以後の譲渡から適用されます。
注1.既成市街地等とは、関東地域に限って言えば、23区、武蔵野市の全部、三鷹市、横浜市、川崎市、川口市の一部を言います。
注2.例えば、所有期間が土地等は10年超、建物は10年以下であるときは、土地等のみが譲渡資産に該当します
注3.譲渡資産を相談や贈与により取得した場合は、前所有者の所有期間を引き継いで計算しますので、仮に、譲渡資産を相続により取得して数年しか経過していなくても、前所有者の期間を通算する事にご注意下さい。このことは、いずれの場合でも、所有期間の判定に共通のものとして扱われています。
(2)買換え資産
既成市街地等"外"にある土地等、建物、構築物または機械装置。ただし、国内にあるものに限られます。
また、買換えが認められる土地の面積は譲渡した土地等の5倍以内、となっています。
2.長期保有土地等から土地等または減価償却資産への買換え
(1)譲渡資産
国内にある土地等、建物または構築物で、譲渡の年の1月1日において所有期間が10年を超えるもの。
(2)買換資産
国内にある土地等、建物、構築物または機械装置。
この特例を受ける場合の譲渡は、平成12年12月31日までとされていましたが、今年度の改正で適用期限が3年延長され平成15年12月31日まで引き続き適用されることになりました。
また、買換えが認められる土地の面積は、譲渡した土地等の5倍以内、となっています。
(注) 例えば、所有期間が土地等は10年超、建物は10年以下であるときは、土地等のみが譲渡資産に該当します。
《計算例》
譲渡資産の譲渡価額 8,000万円
仲介料等の譲渡経費 300万円
譲渡資産の取得費 譲渡価額の5%
400万円
買換え資産の取得価額 7,000万円
(1) 譲渡所得および税金
譲渡収入 8000 - 700 × 0.8 =2,400万円
(取得費400+譲渡費300)
×2400 / 8000 =▲210万円
差引 =2,190万円
2190×(所得税20% + 住民税6%) =569万円
(注) 譲渡がなかったとされる部分、つまり、課税繰延割合は80%であるため、買換資産の取得価額の20%は課税所得の計算に取り込まれます。
また、長期譲渡の100万円特別控除は、買換え特例の適用を受けるときは適用されません。
(2) 買換資産の取得価額
(取得費400 + 譲渡経費300)
× (7000 × 0.8) ÷ 8000 =490万円
買換資産の取得費7000 × 0.2 =1,400万円
合 計 1,890万円
このように、この特例を受けると、買替資産の実際の取得価額は7000万円にもかかわらず、1890万円とされ、この金額によって減価償却費の計算を行い、また、将来譲渡するときの取得費もこの金額をもとに計算します。
(注) この規定を適用した場合の買換え資産の取得価額は、上記のように実際の購入価額ではなく、特殊な税務上の計算が要求されます。
したがって、税務上の取得費は実際の購入価額よりもかなり低くなり、減価償却費はその低い税務上の取得費をもとに計算することになりますので、その結果、所得金額が多く、税金も多くなります。買換え特例が一般的に"課税の繰延べ"といわれるゆえんです。
さらに、この特例を受けると、①割増償却及び特別償却を適用できず、また、②取得時期を引き継ぐことができません。
特に②については、買換資産の実際の取得日から所有期間を計算することになります。
したがって、この特例を受けるに当たっては、これからの事を考慮したうえで、適用するかしかないかを決めることが重要と思われます。

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